穀物などに付着する酵母を自然培養した天然酵母、
こだわった天然素材を使用。
くちどけもっちり食感
風味(酸味・うまみ)を
お楽しみください。
スローブレッドは本物のおいしさを目指し、
「天然酵母100%」にこだわっています。
イーストは発酵力が強いため、短時間で生地を膨らますことができ、大量生産に向いています。
天然酵母は発酵力が違う何種類もの酵母や乳酸菌が共存しているため、
短時間で生地を膨らませることはできませんが、
旨みや風味を引き出し、くちどけの良いパンになるのが特徴です。
さらに、スローブレッドの天然酵母は、米麹仕込みにより豊かな風味や香りを引き出しています。
また、天然酵母の生地はデリケートなので、完成までに長い時間をかけ、多くの手仕事で丁寧につくっています。
米麹種天然酵母と相性の良い小麦を選定。
フランスパンタイプ、ブールタイプ、それぞれの商品特性に合わせて小麦粉をブレンドしています。
遠赤外線の効果により短時間で焼き上がるので、中のパン生地は水分を多く含みしっとりとした食感に。
パンの表面はパリッと香ばしく仕上がります。
小さな港とかわいらしい山々に囲まれた街「フラン」。
その街の少し外れに、ある一軒のパン屋さんがあります。
17歳の少女「カシス」は、そのお店の一人娘。
毎朝、焼きたてのパンを街の人たちに届けてまわるのが日課です。
天然酵母100%・天然素材にこだわりイチから丁寧につくる製法は、
いまは亡きお父さんの大切なこだわり。
カシスは、そんなお父さんの思いが詰まったお店のパンと、
それを愛してくれる街の人たちが大好きです。
今日もカシスのお店には、美味しいパンと人々の笑顔があふれています。
朝7時。
自転車のカゴいっぱいに焼きたてのパンをつんで、フランの街を走る少女がいました。
少女は、古い家の前で自転車をとめると、元気にドアを叩きます。
「ファビロオンさん、カシスです。パンの配達にきました」
「あらカシスちゃん、いつもありがとうね」
「もう腰はいいの?」
「ええ、お医者さんには無理をするなって言われているけどね」
パン屋の娘・カシスの一日は、そんな常連さんとの楽しい会話から始まります。
配達を終えると、街が一望できる丘で自転車をとめ、遅めの朝食をとります。
ひと仕事終えたあと、大好きな街を眺めながら食べるパンは絶品です。
「おはよう!カシス」
声のするほうに目を向けると、カシスの親友・ココの姿が。
「おはよう、ココ。どうしたの?」
「ねぇ聞いて。今朝、丘のほうを見たら、朝日を背に、金の髪を輝かせた王子様が立っていたの!」
「あら、ココったら寝ぼけていたんじゃない?」
「もう!本当なんだから!」
それから思春期の女の子ふたりは、理想の王子様の話で大盛り上がり。
そこに、配達用の車で本屋のマルタンが通りがかりました。
「次のハイキングは、またいつもの山にしようぜ」
「そうねマルタン、楽しみにしてる」
カシスとココとマルタン、幼馴染の3人はとっても仲良しです。
「パンを愛するひと達へ」篇
「新パッケージ」篇
お昼すぎ、カシスのパン屋の前には小さなお客様がふたり。
パンが大好きな兄妹ウィルとティナは、ショーウィンドウ越しにお店のパンを眺めています。
「お兄ちゃん、おなかすいちゃった」
「早くおうちに帰ろう」
優しいお兄ちゃんが甘えんぼうの妹をおんぶしながら家に帰ると、
そこにはお母さんが買ってきてくれたパンの山が。
ハラペコの兄妹は、夢中でかぶりつきます。
カシスのお店のパンは、街中の人たちを一瞬で笑顔にする幸せのパンです。
一方、カシスが店番をするパン屋には、この街では見かけない顔の青年が。
その姿を見て、店番をしていたカシスはびっくり。
小麦畑のようにきらめく金色の髪、青空のように澄んだブルーの瞳…
青年は、ココがうわさしていた“王子様”そっくりだったのです。
カシスが見惚れている間に、青年はパンをふたつ買い、颯爽と店を出て行ってしまいました。
パン屋を出た青年は、街外れの古びた家の屋根にのぼり、ふうと一息。
どうやらここが、この青年の特等席のようです。
袋からパンを取り出すと、懐かしそうな笑みで見つめ、パクリと一口。
青年の顔には瞬く間に笑顔が…と思いきや、なぜだか少し寂しそうな顔に。
そして、そのまま黙々と食べてしまいました。
いったい、この青年は何者なのでしょう…?
「走る兄弟」篇
「屋根の上から」篇
よく晴れた日の午後、今日もカシスは元気にパンの配達に向かいます。
あまりにも天気がいいので、小麦畑に寄り道すると、そこにはあの金髪の青年の姿が。
びっくりして、思わず自転車をとめるカシス。
つられてびっくりした青年は、小さく笑い、優しく挨拶をします。
「こんにちは」
「あの、ええっと…」
「アルルです」
「こんにちは、アルル。私はパン屋のカシスです」
カシスは、アルルの名前を知っただけなのに、
なにか特別な秘密を教えてもらったような、大事な宝ものを手に入れたような、
ムズムズした気持ちになりました。そしてそれは、アルルもおなじでした。
その日以来、ふたりはよくおしゃべりをしました。
いつものように大好きな街を眺めながら食べるパンも、
アルルが隣にいるだけで、一等美味しく感じるのでした。
「小麦畑」篇
「新しい物語」篇
今日は幼馴染たちと約束していたハイキングの日。
「なんでアイツがいるんだよ…」不満そうなマルタンの視線の先には、アルルの姿が。
カシスとアルルの仲を知ったココが、気をきかせて誘ったのです。
4人は、自然のなかでたくさん遊び、たくさん笑いあいました。
お昼になると、お花畑にシートを広げてランチタイムです。
ハラペコの4人は、バスケットいっぱいに入っていたパンを、すっかり平らげてしまいました。
「はあ、お腹いっぱい!マルタン、ちょっとそこまで散歩しましょ」
ココがわざとらしくお腹をさすりながら言います。
「カシスと行けよ」
「森のなかをレディだけで歩かせるつもり?」
「まったく、しょうがないヤツだな」
「それじゃあおふたりさん、ごゆっくり」
そう言いたげなウインクを残して森のなかへ消えていくココたちを見送ると、
アルルがおもむろに口を開きました。
「カシス、僕がこの街にきた理由はね」
アルルは、ある理由からヨーロッパ中を旅していること、
フランの街は何年か前にも一度訪れていること、
その時食べたパンの味が忘れられなくてもう一度戻ってきたこと、
だけどそのパンは、残念ながら当時の味ではなかったことを話してくれました。
アルルは、カシスの亡くなったお父さんのパンをこよなく愛してくれていたのです。
「油脂へのこだわり」篇
「花畑(新油脂)」篇
次の日。いつもより早起きをしたカシスは、まっすぐ工房に向かい、
パンの仕込みをしていたお母さんに思いを伝えました。
「私、お父さんのパンをつくりたい」
お母さんは少し驚いた顔をして、しかし娘の決意に満ちた表情を見ると、
強く優しくうなずきました。「やりたいようにやってみなさい」
それから、カシスの修行の日々が始まりました。
閉店後の工房には、焼きそこないのパンがどんどん積み上がっていきます。
部屋の本棚には、恋愛小説の代わりにパンの歴史やレシピに関する本が増えていきます。
お父さんの日記も読みました。そこには、パンづくりへの熱い思いと、
家族への深い愛情がつづられていて、何度もカシスを励ましてくれました。
そんな試行錯誤の日々を過ごして何日が経ったことでしょう。
マルタンが一通の手紙をカシスに持ってきました。
「これ、金髪ヤローが渡してくれって」
渡された手紙を読んで、カシスの顔はみるみるうちに青ざめていきます。
『すまないカシス。突然だけど、明日、この街を旅立たなくてはならない。
君のパンを食べたかったのだけれど… せめて、お別れを言いたい。
明日の朝、いつもの丘で待ってる。 アルル』
「届けたいおいしさ」篇
明日には、アルルがいなくなる。
そう思うと今にも泣き出しそうなカシスでしたが、悲しんでいる暇はありません。
明日までになんとしてもお父さんのパンを完成させるんだ…
祈るような気持ちでパンをこね、朝まで、何度も何度も焼き直しました。
そしてついに旅立ちの日。
ひと気のない早朝の街を全力で走るカシス。自転車のカゴには、焼きたてのパンが。
階段前で自転車をとめると、丘へ続く階段を一気に駆け上がります。
「おはよう、カシス」
「おはよう、アルル」
息を整え汗を拭うカシスの手には、持ってきたはずのパンがありません。
「約束のパン、ごめん、間に合わなかった」
「うん」
「私ね、もっと修行するから。がんばるから。だから…
私の本当のパンが焼き上がるまで、待っていてくれますか?」
そう言って差し出されたカシスの手は、かすかに震えています。
アルルは、その小さな手を優しく包むように握り返し、カシスの目を見て頷きました。
「ああ、待ってるよ。いつまでも待ってる」
「天然素材だけで」篇
ここは、フランの街。
街いちばんのパン屋さん「ブーランジェリー カシス」の前には、たくさんの人が集まっています。
今日は、お店の看板娘・カシスが、この街を旅立つ日だからです。
カシスがお店を出ると、たくさんの人がカシスに声をかけました。
「カシス!ぜったい私のこと忘れないでよね!」と、泣きじゃくるココ。
「元気でがんばれよ」と、笑顔で見送るマルタン。
カシスはたっぷりお辞儀をして、集まってくれたひとりひとりの顔を目に焼き付けます。
電車に乗ると、車窓からは大好きな街の景色。
お母さんや幼馴染たち、そしてお父さんが遺してくれたお店と離れてしまうのは寂しいけれど、
カシスは将来のために、旅立つことを決めました。
「立派なパン職人になる」
その夢のために、パリのパン屋で本格的な修行をすることにしたのです。
カシスを乗せて、電車は走ります。
窓の外はもう、カシスが知らない景色です。
「この先、いったいどんな出会いが待ち受けているのだろう」
カシスの物語はまだ始まったばかりです。
「カシス・旅立ち」篇
パリの郊外にある街・リオン。
人も車もたくさん走り、駅を中心に近代的なビルが立ち並ぶ都会ですが、
中心部から少し離れると、豊かな自然や古い街並みも残っている素敵な街です。
遠くの丘には古いお城がたっていて、街の人たちを静かに見守っています。
この街で、カシスの新しい生活がスタートします。
初めての都会に緊張しながら歩いていると、
大きなモミの木の向こうに修行先のパン屋が見えてきました。
ドキドキしながらお店のドアを開けると…
「カシスちゃん!」
突然、エプロン姿のおばさんがとんできて、カシスをぎゅっと抱きしめました。
思わぬ出迎えにびっくりするカシス。
このおばさん…もとい、お店のオーナー・ルイーゼの熱烈な歓迎も無理もありません。
実はこのお店「オルヴァン」は、かつてカシスのお父さんとお母さんが働いていたパン屋なのです。
「あのふたりの娘に会えるなんてうれしいわ!」
「ルイーゼさん、今日からお世話になります」
「カシス・旅立ち(後編)」篇
オルヴァンの人たちとは、すぐに仲良くなれました。
師匠のアベルは、パリ屈指のパン職人。
美味しいパンをつくるために、手間は惜しみません。
カシスは、アベルのパンづくりに対する誠実な姿勢をとても尊敬しています。
それから、見習い仲間のナナ。
ナナは、カシスのお父さんとおなじ日本人。カシスよりずっと遠いところから修行にきているのです。
お互いに、家族と離れた暮らしに寂しくなることもあるけれど、
そんなときはふたりで楽しくおしゃべりをすれば、明日からまたがんばれるのでした。
オルヴァンはパリの名店ですが、お母さんのお店と少し似たところがありました。
小さいけれど、丁寧にパンをつくっていて、街で暮らす人たちに愛されています。
どこの街でも、美味しいパンを食べたときの笑顔はみんないっしょ。
カシスはその笑顔を見るたびに、いつか自分のパンで、世界中の人たちを、そしてアルルを、
幸せでいっぱいにしたいと思うのでした。
「ベーグル」篇
「ベーグル」篇
「ソフトクッペ」篇
「ソフトクッペ」篇
「パンを愛する、人たちへ」篇
ある日のオルヴァンには、お母さんといっしょに買い物にきたひとりの女の子がいました。
ズラリと並ぶ美味しそうなパンに、女の子は興味津々。
目を輝かせて見ていると、ひとつのパンの上にちょこんと、小さな不思議なものが座っているのを見つけました。
「あなた、天然コーボの精ね!」
女の子が声をかけると、天然コーボの精は、慌てて姿を隠してしまいます。
天然コーボの精とは、ここリオンの街に古くから伝わる童話に出てくる、パンを美味しくしてくれる妖精のことです。
「お母さん!いまね、このパンの上に天然コーボの精がいたの!」
「はいはい、遊んでないで早くパンを選んでちょうだいね」
どうやら、大人には妖精の姿が見えないようです。
女の子はお店中を探し回ります。
そしてついに、くるくると踊る天然コーボの精を見つけます。
そこはパン工房の中でした。
天然コーボの精は、テーブルの上のボウルのなかにまた隠れてしまいました。
「あら、こんなところまで入ってきてはダメよ」カシスが女の子に声をかけます。
「お姉さん、このボウルに入っているものはなあに?」
「それは天然酵母。パンをふっくら美味しくしてくれる魔法の液よ」
そう答えるカシスの手のなかには、焼く前のパン生地。
そしてその上には、さっきの天然コーボの精が乗っていました。
「天然コーボさん、いつも美味しいパンをありがとう」
女の子は、満足そうな笑顔を見せると、大好きなパンを買って、お店をあとにしました。
「自家製ルヴァン種製法」篇
カシスが修行に励んでいるころ、アルルはまた新しい街をさまよっていました。
この旅のゴールはどこなのか、何を見つければ正解なのか、本人にもわかりません。
今はただ、疲れだけがアルルの心をむしばんでいました。
ふと顔を上げ、パン屋のショーウィンドウを見やると、道の向こうに見慣れた顔が。
それは、カシスでした。
振り返ると、雑踏のなかに消えていくカシスの後ろ姿。急いであとを追いかけます。
鏡だらけの部屋のなか、だまし絵のような建物のなか、空に向かってのびる階段のなか…
途中から幻であることはわかっていましたが、アルルはカシスを追いかけ続けます。
「カシス!」
叫ぶように名前を呼んでも、カシスはまっすぐ前だけを見て、どんどん先へ進んでいきます。
やがて、階段をのぼった先に現れた扉を開けると、そこには大きな樹が。
そこはかつて、カシスと楽しい時間をすごした思い出の場所でした。
カシスと笑いあった日々の思い出が、次第にアルルの心を温かくしていきます。
「僕の居場所はここじゃないんだ」
アルルは、長く決別していた実家に帰ることを決心しました。
そしてそれは、カシスの運命にも、ちょっとした奇跡をもたらすこととなります。
「天然素材、だけ。最先端」篇
時が過ぎ、カシスもアルルもすっかり大人になりました。
今日は、ふたりの結婚式の日。
長い長い旅路の末、ふたりはとうとう結ばれたのです。
教会にはふたりを慕うたくさんの人が集まり、祝福をおくります。
ふたりは、川のほとりにパン屋を開くことにしました。
大きな水車が目印の、かわいいパン屋です。
ふたりのパン屋は、今日も「美味しい」の笑顔で溢れています。
*
ところで、実家に帰ったアルルはその後どうなったのでしょう?
結局、アルルは何者で、そしてふたりはどうやって再び出会い、結ばれたのでしょう?
そのお話はまた別の機会に…。
パンを愛するふたりの物語は、まだまだ続きます。
「新しい物語」篇
フランの街いちばんのパン屋「ブーランジェリー カシス」の一人娘。数年前、日本人でパン職人だったお父さんを亡くし、お母さんとふたりで暮らしている。お母さんのパン屋のお手伝いが大好き。いつも笑顔の挨拶を忘れないカシスは、街のみんなから愛されている。
お父さんは、かつてパリの名店「オルヴァン」で修行をしていた。
爽やかで優しいまなざしの金髪の青年。ある日、突然カシスのパン屋に現れる。パリの大学で建築を学び、いろいろな国の街並みを研究しながらヨーロッパ中を旅している。そんな彼が、フランの街に立ち寄ったのは、彼の出生とパンにまつわる、とある秘密があった。
女手ひとつでカシスを育てるたのもしいお母さん。亡き夫のこだわりを引き継ぎ、天然酵母100%・天然素材にこだわった自慢のパンをつくっている。ひとたびお店を開ければ、こんがり焼けたパンの香りとお母さんの大きな笑い声が街中に広がっていく。
パリの名店「オルヴァン」のオーナーにして名物おばさん。細かいことは気にしない豪快な性格。かつて、カシスのお父さん・お母さんがこのお店で働いており、その娘であるカシスのことをとてもかわいがっている。
「オルヴァン」で働くパン職人。カシスの師匠。とても明るくお調子者に見られるが、パンづくりのことになるととても真剣。パンに対する強いこだわりと愛情を持っており、弟子のカシスのことを厳しくも温かく指導している。